「Gemini Enterprise Businessが気になっているけれど、ほかのプランと何が違うの?」――そんな疑問をお持ちではないでしょうか。
Businessは上位のStandard/Plusより低い価格から始められる一方、一部の機能には1日あたりの利用上限があり、機能や管理面にも違いがあります。料金の安さだけで選ばず、自社の使い方に合うかを確かめておきましょう。
本記事では、Gemini Enterprise Businessの位置づけや機能、利用上限、Standard/Plusとの違い、管理面の制約、申し込み方法まで解説します。
Gemini Enterprise Businessとは?小規模なビジネスやチーム向けのエディション
Gemini Enterprise Businessは、Googleが企業向けに提供するAIプラットフォーム「Gemini Enterprise」のエディションのひとつです。Googleのヘルプでは、中小規模のビジネスや大企業内の小規模なチームに向けて、複雑なITの設定なしで使えるエディションとして案内されています。
検索・AIアシスタント・AIエージェントというGemini Enterpriseの主要な機能は、Businessでも利用できます。
Gemini Enterprise全体の仕組みを知りたい方は、Gemini Enterpriseとは?何ができる?主な機能や特徴をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。
Gemini EnterpriseのBusiness・Standard・Plusの位置づけ
Gemini Enterpriseには、Business、Standard、Plus、Frontline、Pay-as-you-goという5つのエディションがあります。それぞれの位置づけを、次の表にまとめました。
| エディション | 位置づけ |
|---|---|
| Business | 基本となる機能をまとめたエディション。中小規模のビジネスや小規模なチーム向け |
| Standard/Plus | Businessの全機能に、より高い利用上限やコンプライアンス機能などを加えた上位エディション |
| Frontline | 現場スタッフ向け。Standard/Plusを150ユーザー以上利用している組織向けの追加エディション |
| Pay-as-you-go | 使った分だけ支払う従量課金制 |
※エディションの構成は2026年9月時点の情報です。最新情報はGoogle公式サイトをご確認ください。
Google公式サイトでは、Standard/Plusを「Business エディションの全機能に次の機能をプラス」と案内しています。Businessが土台となる機能セットで、Standard/Plusはそこに機能を上乗せした上位版と考えるとわかりやすいでしょう。
公式サイトのFAQでは、上乗せされる内容の例として「より高い割り当て上限、無制限のユーザー数、エンタープライズ グレードのコンプライアンス機能」などが挙げられています。Businessに含まれない機能は、後半の「Gemini Enterprise BusinessとStandard・Plusの違い」で詳しく見ていきましょう。
「Gemini Business」「Google Workspace Business」とは別のサービス
Googleには「Business」がつくサービスがほかにもあり、Gemini Enterprise Businessと混同しやすいので注意しましょう。特に間違えやすいのが、次の2つのサービスです。
- Gemini Business:Google Workspaceに追加して使う、旧来のGeminiのアドオン(追加オプション)として提供されていたサービスです。2025年1月からWorkspaceのBusiness・EnterpriseエディションにGeminiのAI機能が含まれるようになりました。現在は「Gemini Business–Legacy」として、新たに購入することはできません。同じく旧アドオンの「Gemini Enterprise–Legacy」も、現在のGemini Enterpriseとは別のサービスです。
- Google Workspace Business Starter/Business Standard/Business Plus:Gmailやドライブ、Meetなどを使うGoogle Workspace自体のエディションです。エディションに応じてGmailやドキュメントなど各アプリの中でGeminiのAI機能を使えますが、Gemini Enterpriseの利用には別途ライセンスが必要です。
「Gemini Business」で検索すると旧アドオンの情報が表示される場合もあるため、料金や機能を調べる際はどのサービスの話かを確かめておくと安心です。Workspace版との違いは、Gemini EnterpriseとGoogle WorkspaceのGeminiの違いとは?で詳しく解説しています。
Gemini Enterprise Businessに含まれる機能
Businessには、社内データの検索やAIアシスタント、調査用のエージェント、資料作成の機能などがひととおり含まれています。ここでは、主な6つの機能で何ができるのかを見ていきましょう。テキスト生成やDeep Researchなどには1日あたりの利用上限があり、具体的な数値は「Gemini Enterprise Businessの利用条件と上限」で解説します。
社内データを横断して検索・回答するAIアシスタント
Businessの中心となるのが、社内に散らばったデータを横断して探し、その結果をもとに回答するAIアシスタントです。接続したサービスの情報を検索し、要約や質問への回答を会話形式で返してくれます。検索の対象は、利用者本人にアクセス権限があるデータに限られます。
社内データに加えて、Google検索の結果を根拠にした回答も得られます。回答はGoogleドキュメントに、表形式のデータはGoogleスプレッドシートに書き出して、ほかのメンバーと共有することも可能です。
2026年8月13日には、特定の作業のための指示を「スキル」として登録し、繰り返し使える機能も一般提供が始まりました。エディション比較表では、スキルの作成と利用のどちらもBusinessの対象に含まれています。
Deep ResearchなどGoogle製のエージェント
Businessには、Googleがあらかじめ用意したエージェントも含まれています。代表的なのがDeep Researchで、ウェブ上の情報や社内データを幅広く調べ、出典を明記したレポートにまとめるエージェントです。
Google公式サイトでは、市場の分析や計画立案など「複雑で多段階にわたる調査業務向け」と紹介されています。ただし、Businessの上限は1シート(利用者1人分のライセンス)あたり1日3回で、有料のシート数を掛けた回数をチーム全体で共有します。調査の回数には限りがあることも押さえておきましょう。
Standard/Plusでは、開発者向けの基盤であるAgent PlatformやADK(Agent Development Kit)で別途開発したエージェントを持ち込めます。サードパーティ製(Google以外の企業が提供する)のエージェントを追加することも可能です。Businessはこれらの対象外で、違いは後半の比較の章で整理します。
Gemini Notebookで社内資料をナレッジベースとして活用する
Gemini Notebook Enterprise(旧称:NotebookLM Enterprise)は、社内の資料をもとに質問や要約ができるノートブックを作る機能です。Google公式サイトによると、PDFやMicrosoft Word、Googleドキュメント、ウェブのURLなど、最大300件の資料から1つのノートブックを作成できます。
作ったノートブックはほかのメンバーと共有でき、資料が増えるにつれて社内のナレッジベースとして使えるようになります。資料から音声や動画の概要、スライド、インフォグラフィックを作ることも可能です。公式サイトでは、社内の資料をまとめて新入社員のオンボーディングに使う例が紹介されています。
Canvasでドキュメントやスライドを作成・編集する
Canvasは、チャット画面の横に表示される作業スペースで、AIと対話しながらドキュメントやスライドを作成・編集できる機能です。
ドキュメントやスライドのほか、メール文面の下書きにも使えます。作成した資料は、Google WorkspaceやMicrosoft Officeの形式などで書き出せます。スライドの作成・編集は2026年7月に一般提供となり、Businessでも使えるようになりました。
ノーコードでカスタムエージェントを作成する
Workflow Builder(旧称:Agent Designer)を使うと、プログラミングの知識がなくても、自社の業務に合わせたAIエージェントを作成できます。作り方は、日本語などの文章でエージェントの目的や動きを指示する方法と、画面上で処理の流れを組み立てる方法の2通りがあります。
複数のステップや、特定の作業を受け持つサブエージェントを組み合わせた処理にも対応しています。作成したエージェントはチーム内で共有できますが、共有時の注意点はセキュリティの章で紹介します。
この機能は、2026年9月にAgent DesignerからWorkflow Builderへ名称が変わりました。Businessのヘルプはまだ旧称のままなので、使い方を調べる際は両方の名前で探してみてください。
画像・動画を生成する
Businessでは、テキストの指示から画像や動画を生成することも可能です。公式サイトでは、商品画像とブランドガイドラインをもとに、マーケティング用の素材を作る例が紹介されています。
ただし、1シートあたり1日に画像は2枚、動画は1件までと、ほかの機能に比べて上限は少なめです。まとまった量を作る場合は、チーム全体の上限に収まるかを事前に確認しておくと安心でしょう。
Gemini Enterprise Businessで連携できるサービス
Businessでは、Google Workspaceのアプリだけでなく、Microsoft 365やSlack、Notionなど他社の業務サービスとも連携できます。ここでは、連携できる主なサービスと、連携によってできることを紹介します。
Google WorkspaceやMicrosoft 365・Slack・Notionなどと連携できる
Gemini Enterpriseでは、外部のサービスとつなぐ仕組みを「コネクタ」と呼びます。Businessヘルプによると、Googleのサービスはコネクタを有効にし、Googleアカウント側の「スマート機能」をオンにして接続します。他社のサービスはそれぞれのアカウントで認証して接続し、サービスによっては管理者の承認など追加の条件があります。
Businessで使える主なコネクタは次のとおりです。
| 分野 | 主なサービス |
|---|---|
| Google Workspace | Gmail、Googleカレンダー、Googleドライブ、Google Chat、Googleサイト |
| Microsoft 365 | Outlook、OneDrive、SharePoint、Teams |
| チャット | Slack |
| プロジェクト管理・ドキュメント | Asana、Atlassian Jira Cloud/Confluence Cloud、Notion |
| ファイル共有 | Box、Dropbox |
| 営業・カスタマーサポート | HubSpot、Salesforce、Zendesk |
| 開発 | GitHub |
※2026年9月時点でBusinessヘルプに掲載されている主なコネクタです。対応サービスは追加・変更されることがあるため、最新の一覧はBusinessヘルプでご確認ください。
複数のサービスに分かれた情報をまとめて検索できるため、Google WorkspaceとMicrosoft 365を併用している組織でも、同じ画面から社内の情報を探せます。導入前に、接続したいサービスの条件をBusinessヘルプで確認しておきましょう。
検索だけでなくメール送信やタスク作成などの操作にも対応する
コネクタは情報を探すためだけのものではありません。対応するサービスでは、AIへの指示をきっかけに、メールの送信や予定の登録といった操作まで実行できます。Businessヘルプに掲載されている操作の例は次のとおりです。
- Gmail:メールの送信、ラベルの追加
- Googleカレンダー:予定の作成・更新
- Outlook:メールの送信・返信、予定の作成
- Jira Cloud:課題の作成・更新、ステータスの変更
- Asana:タスクの作成・更新
- Slack:メッセージの送信・予約送信
なお、読み取り専用で、操作には対応していないコネクタもあります。
便利な反面、書き込み操作に対応したコネクタを使うと、AIが業務システムの内容を変更できるようになります。たとえばAsanaのタスク作成は、確認画面を挟まずにすぐ実行されるとヘルプに明記されています。
Businessヘルプでは「明示的に許可したものにだけアクセスする」という考え方が示されています。接続するサービスや権限は必要な範囲に絞り、重要な更新をAIに任せる範囲を事前に決めるなど、組織側で運用ルールを設けておくと安心です。
Gemini Enterprise Businessの利用条件と上限
Businessを検討するうえで押さえておきたいのが、利用できる人数と1日あたりの利用上限です。ここでは、Googleの公式ヘルプに掲載されている数値をもとに、Businessでどこまで使えるのかを整理します。
利用できる人数|数百人規模のチームまでが対象
Businessは1人から利用でき、Google公式サイトでは最大300人までのチーム向けと案内されています。
ただし、Businessヘルプやエディション比較表には、最大500人(500シート)まで利用できるとの記載があります。300人を超える規模で検討している場合は、申し込み前に公式サイトで最新の情報を確認しておきましょう。500人を超える組織や、人数を気にせず全社で使いたい場合は、人数に上限のないStandard/Plusを検討するとよいでしょう。
また、すでに別のGemini Enterpriseのプランを契約している組織は、Businessを購入できないとGoogle Workspace管理者ヘルプに記載されています。一部の部署でStandardを使いながら、ほかの部署向けにBusinessを追加するといった組み合わせはできないため注意が必要です。
1日あたりの利用上限はチーム全体でプールされる
Businessでは、一部の機能に1日あたりの利用上限が設けられています。Businessヘルプに掲載されている上限は次のとおりです。
| 機能 | 1シートあたりの上限 |
|---|---|
| テキスト生成(AIアシスタントの回答など) | 1日120回 |
| Google検索を根拠にした回答 | 1日120回 |
| 画像の生成 | 1日2枚 |
| 動画の生成 | 1日1件 |
| Deep Research | 1日3回 |
| ノーコードでのエージェント作成 | 1日1件 |
| Gemini Notebook Enterprise | 音声概要・動画概要は各1日20件 |
※Gemini Notebook Enterpriseには、1日あたりの上限とは別の上限もあります。資料は1ノートブックあたり300件、ノートブックは1ユーザーあたり500件、スライド・インフォグラフィックは1ユーザーあたり各15件までです。
※2026年9月12日更新のBusinessヘルプの情報です。上限は変更されることがあるため、最新の数値はBusinessヘルプでご確認ください。
表に挙げた上限は1人ずつ割り当てられるのではなく、チーム全体で共有する「プール方式」です。チーム全体の1日の上限は、1シートあたりの数値に、契約しているシート数を掛けた値になります。
たとえば10シートを契約している場合、テキスト生成はチーム全体で1日1,200回、Deep Researchは1日30回まで使えます。ある人が120回を超えても、ほかのメンバーが使っていない分があれば引き続き利用できます。
一方で、Businessヘルプには、一部のメンバーが多く使うとその日のチーム全体の上限を使い切ってしまう場合があるとも書かれています。利用が特定の人に偏りそうな場合は、社内で使い方のルールを決めておくと安心でしょう。
無料トライアル中は、5シート分に相当する上限が割り当てられます。Standard/Plusには、Businessより高い上限が設定されています。
ストレージとデータインデックスは1シートあたり25GiBをチームで共有する
Gemini Enterpriseに取り込んだデータの保存容量と、データインデックス(検索用にデータを整理して保存する仕組み)の容量は、あわせて1シートあたり25GiBです。この容量もチーム全体で共有するため、10シートを契約していれば250GiBを使えます。
Standardは30GiB、Plusは75GiBで、エディションが上がるほど容量も大きくなります。Standard/Plusには、請求書払いのCloud請求先アカウントなど、所定の条件を満たす場合に超過料金の仕組みがあります。容量を超えた分を追加料金で使い続けられますが、Businessは対象外です。
利用上限に達した場合はシート追加や上位エディションを検討する
Businessでは、特定のユーザーや特定の機能だけ上限を引き上げることはできません。上限が足りない状態が続く場合、Businessヘルプでは次の2つの方法が案内されています。
- シートを追加する:契約するシート数を増やすと、チーム全体で共有する上限も増えます
- Standard/Plusに切り替える:Businessより高い上限が設定されているほか、上限の引き上げを個別に申請できる場合もあります
エディションごとの上限の違いや、上限を超えたときの扱いは、Gemini Enterpriseの料金・プランを解説|エディション別の違いと選び方で比較しています。
Gemini Enterprise BusinessとStandard・Plusの違い
Standard/Plusは、Businessの全機能に上位の機能を加えたエディションです。ここでは、Standard/Plusにはあって、Businessには含まれない主な機能を整理します。
Businessに含まれない主な機能
Googleのエディション比較表で、Standard/Plusにはあり、Businessには含まれない主な機能は次のとおりです。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| データコネクタのエコシステム全体へのアクセス | Gemini Enterpriseで提供されているコネクタをすべて利用できる。Businessで使えるのは、選ばれた一部のコネクタ |
| 最新のGeminiモデルへの優先アクセス | 新しいGeminiモデルを優先的に利用できる。Businessはこの対象外 |
| データ分析情報(Data Insights) | BigQueryのデータに自然な言葉で問いかけて分析できるGoogle製のエージェント。許可リスト付きで提供されており、利用には営業担当への問い合わせが必要 |
| 独自のフルコードエージェントの利用 | Gemini Enterpriseの外で、プログラミングによって開発したエージェントを取り込んで使える |
| Agent Marketplace | パートナー企業が開発したエージェントを探して導入できる |
| エンタープライズ クラスのセキュリティとコンプライアンス | データの保存場所の指定や、暗号鍵を自社で管理する機能などの高度な統制機能 |
| AIデベロッパーツール | 所定の請求条件を満たす場合、AI搭載の開発環境「Google Antigravity」など、開発者向けのAIツールを利用できる |
※2026年9月時点のエディション比較表をもとに作成しています。
Businessに含まれない機能は、高度なエージェント開発や他社製エージェントの導入、データ管理・コンプライアンスなどに関わるものが中心です。社内データの検索やAIアシスタント、ノーコードでのエージェント作成といった基本の機能は、Businessにもひととおり含まれています。
セキュリティについても、データをAIの学習に使わないといった基本の保護はBusinessに備わっており、詳しくは次の章で解説します。利用人数やストレージ容量の違いは、前の章「Gemini Enterprise Businessの利用条件と上限」をご覧ください。
Standard・Plusを検討したほうがよい機能要件
上の表をふまえると、次のような機能が必要な場合は、BusinessよりStandard/Plusが候補になります。
- 自社で開発したエージェントや、パートナー企業が開発したエージェントを社内で使いたい
- エンジニアの開発業務にもAIツールを取り入れたい
- 新しいGeminiモデルを優先的に使いたい
- Businessでは対象外で、Standard/Plusでは対応しているコネクタを使いたい
- データの保存場所の指定など、高度なセキュリティやコンプライアンスの要件がある
反対に、こうした機能が不要で、利用人数や上限、ストレージ容量も自社の要件を満たす場合は、Businessから始めるのも十分に考えられる選択肢です。
Gemini Enterprise Businessのセキュリティと管理機能
社内データをAIに扱わせるうえで、セキュリティや管理面は気になるポイントです。ここでは、Businessに備わっている保護の仕組み、Standard/Plusとの違い、Businessならではの管理面の制約を順に見ていきましょう。
入力したデータはモデル学習に使われず保護機能も備えている
Google公式サイトのBusinessエディションのページでは、データの扱いについて次の4点が明記されています。
- 「データを所有するのはお客様であり、Google ではありません」
- 「プロンプト、出力、トレーニングなどのデータが、Google のモデルや他のお客様のモデルのトレーニングに使用されることはありません」
- 「Google が第三者にお客様のデータを販売することはありません」
- 「Google がお客様のデータを広告に使用することはありません」
不正な指示や有害な内容から守る仕組みとして、Model Armorなどの保護機能も追加費用なしで組み込まれています。主な保護は、有害なコンテンツのブロック、プロンプトインジェクション(AIを不正に操作する指示)のリスク低減、機密情報の意図しない表示を防ぐフィルタの3つです。ほかのエディションでは管理者の設定が必要な場合があるのに対し、Businessではすべての利用者に最初から有効です。
また、検索結果には元データのアクセス権限が反映され、エージェントの基本的な管理機能もBusinessに含まれています。
ただし、「学習に使われない」ことと「データが保存されない」ことは別の話です。会話の履歴がどのように保存・管理されるかは、この章の最後で解説します。
VPC-SC・顧客管理の暗号鍵・データ所在地などはStandard・Plusのみ
より厳しいセキュリティ要件に応える高度な統制機能は、Standard/Plusでのみ利用できます。Google公式サイトでも、次の機能はStandard/Plusで利用できると注記されています。
- VPC Service Controls(VPC-SC):データを扱える範囲に境界を設け、外部への持ち出しのリスクを抑える仕組み
- 顧客管理の暗号鍵(CMEK):データの暗号化に使う鍵を、Googleではなく自社で管理できる機能
- アクセスの透明性:Googleの担当者がデータにアクセスした際の記録を確認できる機能
- データ所在地:データを保存・処理する地域を指定できる機能(対応する地域や機能には制限があります)
公式サイトでは、HIPAAやFedRAMPなどの厳格なコンプライアンス要件を検討する組織向けの認証・セキュリティ機能も案内されています。適用状況は、要件ごとに確認が必要です。エディション比較表でも、「エンタープライズ クラスのセキュリティとコンプライアンス」はBusinessの対象外です。
Businessでは保持・監査・共有など一部の管理機能に制約がある
Google Workspace管理者ヘルプでは、Businessの管理面について次の制約が案内されています。
- 管理者は、Google Vault(Google Workspaceのデータ保持・検索ツール)でチャットの監査や保持ポリシーの設定ができない
- 管理者は、利用者がチャットを削除するのを禁止できない
- データを保存する地域(データリージョン)の指定に対応していない
- Businessの利用状況は、管理コンソールのレポートやログに含まれない
ムームードメインのGemini Enterpriseの案内ページでも、管理者向けの詳細な監査ログ機能は現時点で提供していないと説明しています。一方、Google Workspace経由で契約した場合は、利用状況のログを確認できると案内しているヘルプもあります。ログの要件がある場合は、導入前に確認しておきましょう。
Businessでは、契約中のチャットの保持期間は60日間で、過ぎたものは自動的に削除されます。管理者が保持ポリシーを設定できないため、保存期間を自社の規程に合わせて変えることもできません。
チャット履歴の保存期間を変えたい、利用状況をより詳しく記録したい、データを日本国内に保管したいといった要件がある場合は、Standard/Plusを検討しましょう。Standard/PlusではGoogle Cloudの監査ログで利用状況を記録でき、Plusではチャット履歴の保存期間を1〜180日の範囲で選べます。日本のリージョンは許可リスト付きで提供されており、利用にはGoogleへの確認が必要です。
共有機能の扱いにも注意しましょう。チャットを共有すると、共有した時点までのやり取りを、非公開の資料をもとに生成された内容も含めて閲覧できます。共有後の新しいメッセージは共有されません。Workflow Builderで作ったエージェントを共有すると、元のファイルへのアクセス権がない人も、エージェントに関連付けられたデータソースやファイルの内容を質問できます。
チャットの共有はチーム管理者が無効にでき、エージェントの共有範囲も管理者が管理できます。導入の段階で、共有のルールを社内で決めておくと安心です。
Gemini Enterprise Businessの料金と申し込み方法
ここでは、Businessの料金の目安と、主な申し込み方法を紹介します。
1シートあたり月額21米ドルから|30日間の無料トライアルがある
Google公式サイトでは、Businessの料金は「$21~(シートあたり月額)」と案内されています。料金は利用者ごとのシート単位の定額で、使った量によって変わることはありません。
Business専用ページから直接申し込む場合は、月契約と年契約があります。「21米ドルから」がどちらの単価かは公式に明記されていません。正式な金額は、購入画面や見積もりで確認しましょう。
30日間の無料トライアルもあり、トライアル中は月契約で最大5シートまで無料で試せます。ただし、5シートを超えて増やしたり、年契約に切り替えたりすると、トライアルはその時点で終了して支払いが始まります。
※料金・トライアルの条件は2026年9月時点の情報です。最新情報はGoogle公式サイトをご確認ください。
主な契約・提供経路を確認する
Businessの主な申し込み方法は、次の2つです。
- Google Workspaceの契約に追加する:すでにGoogle Workspaceを使っている組織は、Workspaceの契約にBusinessを追加する形で導入できます。申し込みは、Googleの営業担当や、ムームードメインのような販売代理店を通して行います。ライセンスの割り当てなどは、Google Workspaceの管理画面でまとめて管理できます。
- Businessのサイトから直接申し込む:Business専用ページから、仕事用のメールアドレスでアカウントを作成して始める方法です。Google Workspaceの契約に追加した場合とは、請求の管理方法が異なります。
注意したいのは、契約の経路によって利用環境が分かれる点です。Businessヘルプによると、Business専用ページから直接申し込んだセルフサービスの環境と、会社がまとめて契約した環境の間でデータを移す方法は、現時点ではありません。使い始める前に、組織としてどの経路で契約するかを決めておきましょう。
Gemini Enterpriseの導入を検討されている方は、ぜひムームードメインの無料相談をご活用ください。ムームードメイン経由でGoogle Workspaceをご契約いただくと、Gemini Enterprise Businessを割引価格でご提供できます。日本円でのお見積もりにも対応していますので、こちらの無料相談窓口からお気軽にご相談ください。
Gemini Enterprise Businessが向いている組織
ここまでの内容をもとに、Businessが向いている組織と、Standard/Plusを検討したほうがよい組織を整理します。自社の状況に当てはめながら確認してみてください。
Businessが向いている組織
次のような組織であれば、Businessが有力な選択肢になります。
- 300人までの組織や、部署・チーム単位でAIの活用を始めたい
- Google WorkspaceやMicrosoft 365、Slack、Notionなどに情報が散らばっていて、まとめて検索したい
- 社内の資料をもとにした調査やレポート作成に、AIを取り入れたい
- プログラミングなしで、業務に合わせたAIエージェントを作って試したい
- データの保存場所の指定や、チャット履歴の保存期間の変更、詳細な監査ログでの記録は必須ではない
- 1日あたりの利用上限が、チームの使い方に見合っている
301〜500人で使う場合は、利用できる人数の最新情報を公式サイトで確認しておきましょう。
当てはまる項目が多く、無料トライアルを利用できる場合は、自社のデータや普段の業務で試してみるのがおすすめです。
Standard・Plusを検討したほうがよい組織
一方で、次のような条件がある場合は、はじめからStandard/Plusを比較しておくと安心です。
- 500人を超える規模で使う予定がある
- データの保存場所を、日本国内など特定の地域に指定する必要がある(提供条件は事前に確認が必要)
- 暗号鍵の自社管理やアクセス範囲の制限など、高度なセキュリティ要件がある
- チャット履歴の保存期間を変えたい、またはGoogle Cloudの監査ログなどで利用状況を詳しく記録したい
- 利用上限が足りない状態が続きそうで、条件を満たす契約で超過料金を払ってでも使い続けたい
機能面の要件については、「Gemini Enterprise BusinessとStandard・Plusの違い」の章もあわせて確認しましょう。
Gemini Enterprise Businessに関するよくある質問
Businessの検討時に気になりやすい点を、Q&A形式でまとめました。
Google Workspaceを契約していなくても利用できますか?
はい、利用できます。Businessは、Business専用ページから仕事用のメールアドレスでアカウントを作成して申し込めるため、Google Workspaceの契約は前提になっていません。
反対に、Google Workspaceを契約していても、Gemini EnterpriseはWorkspaceの契約に含まれていません。利用するには、Businessのライセンスを別途用意する必要があります。
個人や数名のチームでも申し込めますか?
はい、申し込めます。Google公式サイトのFAQでは、Businessは「個人、小規模企業、最大 300 名までのチームに最適」と案内されており、1人から利用可能です。
申し込みには、仕事用のメールアドレスを使います。無料トライアルを利用できる場合は、最大5シートまで試してみるとよいでしょう。
BusinessからStandard・Plusへ変更できますか?
Businessヘルプでは、Standardへの切り替えについて、Googleの営業担当に問い合わせるよう案内されています。利用上限が足りない場合の対応としては、Standard/Plusへの切り替えが挙げられています。
ただし、Businessで作成したチャットやノートブック、エージェントなどのデータを、切り替え後に引き継げるかは公式に明記されていません。切り替えを検討する際は、データの扱いを事前に営業担当へ確認しておきましょう。
APIを使った独自開発にも使えますか?
Businessで利用できるのは、従業員が業務で使うGemini Enterpriseのアプリです。AIデベロッパーツールや、外部で開発したフルコードのエージェントの利用は、Businessに含まれていません。
コードでエージェントを開発するなら、技術チーム向けの基盤である「Gemini Enterprise Agent Platform」(Vertex AIの進化版)が選択肢になります。公式FAQによると、Agent PlatformはGemini Enterpriseのアプリとは別に購入する必要があります。料金は、基本的にGoogle Cloudの利用量に応じた従量課金です。
まとめ
Gemini Enterprise Businessは、Gemini Enterpriseのエディションのうち、小規模なビジネスやチームを対象にしたエディションです。社内データの横断検索やAIアシスタント、Deep Research、Workflow Builderでのエージェント作成などを、1シートあたり月額21米ドルから利用できます。
一方で、一部の機能には1日あたりの利用上限があり、その上限はチーム全体で共有されます。データ所在地の指定やCMEK、VPC Service Controlsなどの高度な統制機能はStandard/Plusのみです。無料トライアルを利用できる場合は、自社のデータや業務に合うかを試してみるとよいでしょう。
Gemini Enterprise Businessの導入を検討されている方は、ムームードメインの無料相談をご活用ください。ムームードメイン経由でGoogle Workspaceをご契約いただくと、割引価格でご提供できます。日本円でのお見積もりにも対応していますので、こちらの無料相談窓口からお気軽にご相談ください。



