「Gemini Enterprise Standardは、Businessから何が増えて、Plusとはどこが違うの?」――そんな疑問をお持ちではないでしょうか。
StandardはBusinessの全機能に、より高い利用上限や高度なセキュリティ機能を加えたエディションですが、主な機能の利用上限は同じエディションのユーザー同士で共有する仕組みです。暗号鍵を自社で管理する機能など、契約時に選ぶ利用地域(ロケーション)によって使えるかどうかが変わる機能もあります。自社に必要な機能を、条件とあわせて確認しておきましょう。
本記事では、Gemini Enterprise Standardの位置づけや含まれる機能、利用上限、セキュリティ機能の条件、Plusとの違い、料金と申し込み方法まで解説します。
Gemini Enterprise Standardとは?厳格なセキュリティ・コンプライアンス要件を持つ組織向けエディション
Gemini Enterprise Standardは、Google Cloudが提供するAIプラットフォーム「Gemini Enterprise」のエディションのひとつです。Googleの公式サイトでは、StandardとPlusを「より厳格なセキュリティとコンプライアンス要件を満たす必要がある組織向け」のエディションとして案内しています。
Standardには、Businessエディションの機能がすべて含まれています。そこに、利用上限の引き上げや人数に上限のないシート、サードパーティ製エージェントの利用などが加わります。社内データの検索やAIアシスタント、AIエージェントといったGemini Enterpriseの主要な機能は、Standardでも同じように使えます。
Gemini Enterprise全体の仕組みを知りたい方は、Gemini Enterpriseとは?何ができる?主な機能や特徴をわかりやすく解説もあわせてご覧ください。
Gemini EnterpriseのBusiness・Standard・Plusの位置づけ
Gemini Enterpriseには、Business、Standard、Plus、Frontline、Pay-as-you-goという5つのエディションがあります。それぞれの位置づけを、次の表にまとめました。
| エディション | 位置づけ |
|---|---|
| Business | 基本となる機能をまとめたエディション。中小規模のビジネスや小規模なチーム向け |
| Standard/Plus | Businessの全機能に、より高い利用上限や高度なセキュリティ・コンプライアンス機能などを加えたエディション。より厳格な要件を持つ組織向け |
| Frontline | 現場スタッフ向け。Standard/Plusを150ユーザー以上利用している組織向けの追加エディション |
| Pay-as-you-go | 使った分だけ支払う従量課金制 |
※エディションの構成は2026年9月時点の情報です。最新情報はGoogle公式サイトをご確認ください。
Google公式サイトでは、StandardとPlusを1つの枠にまとめて紹介しています。この2つは共通する機能が多く、主な違いは利用上限やストレージの容量、アシスタントの管理機能にあります。Plusとの違いは、後半の「Gemini Enterprise StandardとPlusの違い」で詳しく見ていきましょう。
「Google Workspace Enterprise Standard」とは別のサービス
名前が似ていて混同しやすいのが、Google Workspaceの「Enterprise Standard」です。こちらはGmailやドライブ、MeetなどをまとめたGoogle Workspace自体のエディションで、Gemini Enterprise Standardとは別のサービスです。
両者の違いを、次の表にまとめました。
| 項目 | Gemini Enterprise Standard | Google Workspace Enterprise Standard |
|---|---|---|
| サービスの種類 | 社内データの検索やAIエージェントを利用するためのAIプラットフォーム | Gmail・ドライブ・Meetなどの業務アプリをまとめたサービス |
| 管理する場所 | Google Cloudコンソール | Google Workspaceの管理コンソール |
| 必要な契約 | Gemini Enterpriseのライセンス | Google Workspaceのライセンス |
Google WorkspaceのEnterprise Standardでも、GmailやGoogleドキュメント、Meetなどのアプリの中でGeminiのAI機能を使えます。ただし、Gemini Enterpriseを利用するには、Google Workspaceとは別にGemini Enterpriseのライセンスが必要です。
「Enterprise Standard」で検索すると、Google Workspaceの情報が表示されることもあります。料金や機能を調べる際は、どちらのサービスの話かを確かめておくと安心です。Google WorkspaceのGeminiとGemini Enterpriseの違いは、Gemini EnterpriseとGoogle WorkspaceのGeminiの違いとは?で詳しく解説しています。
Gemini Enterprise Standardに含まれる機能
Standardには、Businessエディションの機能がすべて含まれており、そこにStandardで使える機能が加わります。Googleのエディション比較表で、Standardでは使えてBusinessには含まれない主な機能を、次の表にまとめました。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| データコネクタのエコシステム全体へのアクセス | Gemini Enterpriseで提供されているコネクタを幅広く利用できる |
| 最新のGeminiモデルへの優先アクセス | 新しいGeminiモデルを優先的に利用できる |
| データ分析情報(Data Insights) | BigQueryのデータに自然な言葉で問いかけて分析できるGoogle製のエージェント |
| 独自のフルコードエージェントの利用 | Gemini Enterpriseの外で開発したエージェントを取り込んで使える |
| Agent Marketplace | パートナー企業が開発したエージェントを探して利用できる |
| エンタープライズ クラスのセキュリティとコンプライアンス | データの保存場所の指定や、暗号鍵を自社で管理する機能などの高度な統制機能 |
| AIデベロッパーツール | 開発者向けのAIツール「Google Antigravity」などを、所定の条件のもとで利用できる |
※2026年9月時点のエディション比較表をもとに作成しています。
このうちセキュリティとコンプライアンスの機能は、「Gemini Enterprise Standardのセキュリティと管理機能」で詳しく解説します。ここでは、Businessと共通する機能と、Standardで加わる機能を順に見ていきましょう。
Businessエディションの全機能(検索・アシスタント・エージェント・Gemini Notebook Enterprise)を含む
Standardでは、Businessに含まれる基本の機能をすべて利用できます。主な機能を次にまとめました。
- 企業内検索:利用者本人にアクセス権限がある社内データを横断して探せる
- AIアシスタント:社内データやGoogle検索の結果をもとに、質問への回答や文章の作成を行える
- Google製のエージェント:Deep Researchなど、調査やレポート作成を任せられるエージェントを利用できる
- Gemini Notebook Enterprise(旧称:NotebookLM Enterprise):社内の資料を読み込ませ、要約や質問への回答に活用できる
- Workflow Builder(旧称:Agent Designer):プログラミングなしで業務用のエージェントを作成できる
- Canvas:ドキュメントやスライドを作成・編集できる
- 画像・動画の生成:指示に沿って画像や動画を作成できる
- スキル:特定の作業のための指示を登録し、繰り返し使える
スキルは2026年6月に許可リスト付きで提供が始まり、8月13日には作成・アップロード・共有の機能が一般提供になりました。利用するには、管理者が設定で有効にする必要があります。Deep Researchや画像・動画の生成などには1日あたりの利用上限があり、Standardの具体的な数値は次の章で解説します。
データコネクタのエコシステム全体にアクセスできる
コネクタとは、Gemini Enterpriseと社内外のサービスをつなぎ、そのデータを検索や回答に使えるようにする仕組みです。エディション比較表では、Businessのコネクタは「セグメントに関連するコネクタを選択してアクセスする」と書かれています。一方、Standardは「データコネクタのエコシステム全体にアクセスする」とされています。
Standard/Plus向けの公式ドキュメントでは、次のようなサービスのコネクタが一般提供されています。
- Google系:Googleドライブ、Gmail、Googleカレンダー
- Microsoft系:SharePoint、OneDrive、Outlook、Teams、Entra ID
- そのほか:Box、Dropbox、Confluence、Jira、ServiceNow、Slack、HubSpot、GitHubなど
一般提供のコネクタは約20種類あり、ほかにも100種類以上のコネクタが公開プレビューとして提供されています。コネクタごとの前提条件や設定の手順は、接続するサービスによって異なります。
※2026年9月時点の公式ドキュメント「サードパーティのデータソースを接続する」をもとにしています。コネクタの種類と提供状況は変わることがあるため、最新情報はGoogle公式サイトをご確認ください。
最新のGeminiモデルへの優先アクセスやData Insights・Agent Marketplaceも利用できる
エディション比較表では、次の3つもBusinessには含まれず、Standardで利用できる機能として示されています。
最新のGeminiモデルへの優先アクセスは、比較表で「最新の Gemini モデルへの優先アクセスを取得する」と記載されている項目です。対象はStandard・Plus・Pay-as-you-goで、Businessは含まれていません。どのモデルを使えるかは、契約時に選ぶロケーションによっても異なります。
データ分析情報(Data Insights)は、BigQueryに保存したデータに自然な言葉で問いかけ、分析結果を得られるGoogle製のエージェントです。リリースノートでは許可リスト付きの一般提供とされており、利用するにはGoogle Cloudの営業担当への問い合わせが必要です。
Agent Marketplaceは、パートナー企業が開発したエージェントを探して利用できる機能です。公式FAQでは、専門的なニーズに対応するエージェントを見つけられると案内されています。
自社で開発したエージェントやサードパーティ製エージェントを持ち込める
Standardでは、Gemini Enterpriseの外で開発したエージェントも社内で利用できます。公式FAQでは、次の2つの方法が案内されています。
- 開発フレームワークのAgent Development Kit(ADK)で作成したエージェントや、Gemini Enterprise Agent Platformで構築したエージェントを、Gemini Enterprise appに直接公開する
- 外部のプラットフォームで動いているエージェントを、エージェント同士をつなぐA2A(Agent2Agent)プロトコルで統合する
Agent Platformは、開発者がエージェントを構築・管理するためのプラットフォームで、Vertex AIの進化版にあたります。Gemini Enterprise appとは別に契約し、使った分だけ料金がかかる仕組みです。
Businessでも、Workflow Builderを使ってノーコードでエージェントを作ることはできます。ただし、外部で開発したフルコードのエージェントは利用できません。社内の開発チームが作ったエージェントや他社製のエージェントを従業員に公開したい場合は、Standard/Plusなどのエディションを選ぶ必要があります。
AIデベロッパーツール(Antigravityなど)も利用できる
Standardには、開発者向けの「AIデベロッパー ツール」も含まれています。コーディングの作業をAIエージェントに任せられるGoogle Antigravityなどを、付属のクレジットの範囲で利用できる機能です。クレジットは、Android向けの開発ツールであるAndroid Studioでも使えます。
Standardのクレジットは、ユーザー1人あたり月額10米ドル相当です。1週間単位で、同じエディションのユーザーが共有する枠として適用され、使い切れなかった分は翌週に繰り越されません。AIデベロッパーツールは2026年8月18日に一般提供が始まり、利用するには請求書で支払う形式のCloud請求先アカウントが必要です。開発者がいない組織では、使う場面は限られるでしょう。
なお、2026年9月17日以降に新規契約、またはオンラインで更新したStandard/Plusには、Gemini Code Assistの機能が含まれなくなりました。既存の契約では、契約期間が終わるまで引き続き利用できます。Googleは代わりに、IDE向けAntigravityの利用を案内しています。Gemini Code Assistを含む契約が必要な場合は、Google Cloudの営業担当に問い合わせましょう。
※AIデベロッパーツールとGemini Code Assistの提供条件は2026年9月時点の情報です。最新情報はGoogle公式サイトをご確認ください。
Gemini Enterprise Standardの利用条件と上限
Standardには利用人数の上限がない一方で、機能ごとに利用上限が決まっています。Googleの公式ドキュメントに掲載されている数値をもとに、Standardでどこまで使えるのかを見ていきましょう。
Standardの主な上限を、次の表にまとめました。
| 機能 | 1シートあたりの上限 |
|---|---|
| AIアシスタントの利用 | 1日160回 |
| ノーコードでのエージェント作成 | 1日1件 |
| 画像の生成 | 1日5枚 |
| 動画の生成 | 1日2件 |
| Deep Research | 1日3回 |
| ストレージとデータインデックス | 30GiB |
| AIデベロッパーツール | 月額10米ドル相当のクレジット |
※2026年9月時点の公式ドキュメント「割り当てと超過料金」をもとに作成しています。上限は変更されることがあるため、最新の数値は公式ページでご確認ください。
Gemini Notebook Enterpriseには、この表とは別にGemini Notebook Enterprise独自の上限が適用されます。
シート数に上限はなく1シートから契約できる
Standardでは、利用できる人数に上限がありません。エディション比較表ではユーザー数が「1人以上」、Google公式サイトでは「シート数無制限」と案内されています。部署単位で使い始めて全社へ広げる場合も、人数の上限を気にする必要はありません。
ただし、Google Cloudコンソールから購入する場合は、請求先アカウントの種類によって購入できるシート数に上限があります。上限を超える場合は、Google Cloudの営業担当を通じて購入する形になります。購入方法は、「Gemini Enterprise Standardの料金と申し込み方法」で解説します。
利用上限はプロジェクトとロケーションごとに、同じエディションのユーザーで共有される
表の上限は、1人ずつに割り当てられるものではありません。同じプロジェクト(Google Cloudでサービスや設定をまとめて管理する単位)とロケーションの中で、同じエディションのユーザー全員が共有する「プール方式」です。全体の上限は、1シートあたりの数値に契約シート数を掛けた値になります。上限はシート数に応じて自動で決まるため、引き上げを個別に申請する必要はありません。
公式ドキュメントでは、Standardを10シート契約した場合の例が紹介されています。この場合、10人で1日1,600回(160回×10シート)のアシスタント利用を共有します。1人が500回使っても、残りのメンバーはその日のうちに合計1,100回まで使えます。
同じプロジェクトとロケーションにPlusのユーザーがいる場合も、ストレージ以外の上限はエディションごとに別々に共有されます。StandardのユーザーがPlusの枠を使うことはできません。
1日単位の上限は、毎日、太平洋時間の午前0時にリセットされます。AIデベロッパーツールのクレジットだけは、最初に利用した時点から7日ごとにリセットされる仕組みです。
ユーザーごとの上限はないため、一部のメンバーが多く使うと、その日の枠を早く使い切ってしまう場合があります。管理者はプールの使用状況を確認できるので、利用が偏りそうな場合は定期的に確認しておくと安心です。
ストレージは1シートあたり30GiBで、プロジェクト全体で共有される
Gemini Enterpriseでは、取り込んだデータの保存容量とデータインデックスの容量を、あわせて1シートあたり30GiBまで使えます。データインデックスとは、検索しやすいようにデータを整理して保存したものです。
ストレージの容量は、ほかの機能と違ってエディションごとに分かれません。同じプロジェクトとロケーションのユーザー全員で、1つの容量を共有します。公式ドキュメントの例では、Standard 100シートとPlus 50シートを契約した場合、全員で合計6,750GiBを使えます。
上限を超えた場合は超過料金で利用を続けられる
機能ごとの上限に達すると、その機能の利用が制限されます。中断を避けたい場合は、管理者が「超過」の設定をオンにすると、上限を超えた分を従量課金で使い続けられます。ただし、ノーコードでのエージェント作成やGemini Notebook Enterpriseの上限は、超過料金の対象外です。
超過料金の仕組みはStandard/Plusで利用でき、Businessは対象外です。利用するには、プロジェクトに請求書払いのCloud請求先アカウントがあり、無料トライアル以外の有効なサブスクリプションが1つ以上あることが条件です。
ストレージだけは扱いが異なり、上限を超えた分には超過の設定に関係なく自動で料金がかかります。料金は、データを保存した日数に応じて日割りで計算されます。
想定外の請求を防ぐために、Cloud Billingでプロジェクトの月額の支出上限や、予算アラートのしきい値を設定することもできます。
※割り当てと超過料金の条件は2026年9月時点の情報です。Googleから超過料金の請求の変更に関する案内メール(2026年8月17日開始の新しい管理機能の案内)を受け取った契約には、以前の版の条件が適用されます。契約中の方は、公式ページで該当する条件をご確認ください。
Gemini Enterprise Standardのセキュリティと管理機能
入力したデータをAIの学習に使わないといった基本の保護は、Business・Standard・Plusのいずれにも備わっています。Standardでは、そこに暗号鍵の管理やデータの保存場所の指定といった高度な統制機能が加わります。ただし、高度な統制機能の中には、契約時に選ぶロケーションによって使えないものもあります。Standardで使える機能と、その条件を順に確認しましょう。
Model ArmorやSensitive Data Protectionなどの保護機能を利用できる
Google公式サイトでは、Business・Standard・Plusのいずれについても、データの扱いを次のように案内しています。プロンプトや出力などのデータは、Googleのモデルや、ほかの顧客のモデルの学習に使われません。データの所有者は利用する企業で、Googleがデータを第三者に販売したり、広告に使ったりすることもありません。
そのうえで、Standardでは次のような保護機能を利用できます。
- Model Armor:AIに送る前のプロンプトと、利用者に返す前の回答をチェックし、プロンプトインジェクション(AIに不正な指示を紛れ込ませる攻撃)などの危険なやり取りを検知する
- Sensitive Data Protection:コネクタやアップロードで取り込むデータを検査し、機密データが取り込まれたり検索対象になったりするのを防ぐ
- 監査ログ:Google Cloudの監査ログに、変更できない形で操作の記録を残せる
- ID管理:Google IdentityやWorkforce Identity連携を使い、社内のIDでユーザーを認証できる
Model Armorはすべてのエディションに含まれており、Standardでは管理者がテンプレートを作成して有効にします。Sensitive Data Protectionは、Businessを除くエディションで利用できる機能です。Googleは、回答を守るModel Armorと、取り込むデータを守るSensitive Data Protectionを組み合わせた多層的な保護として説明しています。
VPC Service Controls・顧客管理の暗号鍵・アクセスの透明性・データ所在地に対応する
VPC Service Controls、顧客管理の暗号鍵、アクセスの透明性、データ所在地は、Standardで使える高度な統制機能です。Google公式サイトでは、これらの機能に「Standard エディションと Plus エディションでご利用いただけます」と注記しています。いずれもBusinessには含まれていません。それぞれの役割を、次の表にまとめました。
| 機能 | 役割 |
|---|---|
| VPC Service Controls(VPC-SC) | 組織のネットワーク外など、信頼できない場所からのアクセスをブロックし、データ漏えいのリスクを減らす |
| 顧客管理の暗号鍵(CMEK) | 自社が管理する暗号鍵でデータを暗号化し、鍵のローテーションや使用権限を自社で管理する |
| アクセスの透明性(AXT) | Googleの担当者がデータにアクセスした際の操作を、ログで確認できる |
| データ所在地(DRZ) | データの保存や処理を、選んだ地域の中にとどめる |
公式サイトでは、これらの機能を使ってHIPAAやFedRAMP Highといった厳格なコンプライアンス要件に対応できると案内しています。ただし、認証の対象になるかどうかは機能やリージョンによって異なります。Standardを契約すれば自動的に要件を満たせるわけではないため、自社の要件に照らして個別に確認しましょう。
顧客管理の暗号鍵とアクセスの透明性はglobalロケーションでは使えない
Standardを購入する際は、利用するロケーションを「global」「us(米国)」「eu(EU)」などから選びます。ロケーションとは、データを保存・処理する地域の設定です。アプリを作成した後でロケーションを変更することはできないため、購入前に決めておく必要があります。
公式ドキュメントでは、顧客管理の暗号鍵とアクセスの透明性は、globalでは使えないと明記されています。どちらの機能も、米国またはEUのマルチリージョンを選ぶ必要があります。アクセスの透明性は、Google Cloudの組織に属するプロジェクトでしか使えない点にも注意しましょう。
一方でGoogleは、規制上の理由がなければglobalを選ぶことを勧めています。globalのほうが応答が速く、最新のモデルや機能を使えるためです。つまり、「暗号鍵を自社で管理したい」と「最新の機能を使いたい」は、両立しない場合があります。社内のセキュリティ担当者と、どちらを優先するかを事前にすり合わせておきましょう。
さらに、Google検索によるグラウンディング(Google検索の結果を根拠にした回答)にも注意が必要です。この機能を有効にしている場合は、データ所在地や顧客管理の暗号鍵、VPC Service Controls、アクセスの透明性が適用されないと注記されています。これらの統制機能を要件としている場合は、Google検索によるグラウンディングを有効にするかどうかもあわせて確認しておきましょう。
日本リージョン(東京)はGoogleへの申請のうえで利用できる
日本国内にデータを置きたい場合は、国内リージョン「asia-northeast1(東京)」を選べます。国内リージョンは許可リスト付きの一般提供で、利用するにはGoogleのアカウントチームへの問い合わせが必要です。
日本リージョンでは、検索やアシスタント、コネクタ、Workflow Builder、カスタムエージェントなどの基本機能について、データの保存とAIの処理の両方を国内で行えます。ただし、次の機能には制約があります。
- globalでしか使えない:Google検索によるグラウンディング、動画の生成、一部の最新モデル、一部の画像生成モデル
- 国内リージョンではデータ所在地の対象外:既定の画像生成モデル、エンタープライズ向けウェブグラウンディング、AIデベロッパーツール
- 国内リージョンでは使えない:Sensitive Data Protection(対応するのはglobalと、米国・EUのマルチリージョン)
globalでしか使えない最新モデルを日本リージョンで有効にする場合は、管理者が警告を確認し、globalへの送信を承認する必要があります。その場合、そのモデルについては、日本国内でのデータ保存やAI処理の対象外になります。「データを日本に保存する」ことと「AIの処理も日本国内で行う」ことは、別の要件として確認しましょう。
顧客管理の暗号鍵は、公式ドキュメントで米国またはEUのマルチリージョンを選ぶ必要があると案内されています。日本リージョンで利用できるかは、契約前にGoogleへ確認しておきましょう。
※ロケーションごとの対応状況は2026年9月時点の情報です。最新情報はGoogle公式サイトをご確認ください。
Gemini Enterprise StandardとPlusの違い
StandardとPlusは、Google公式サイトで1つの枠にまとめて紹介されており、エディション比較表に並ぶ機能の対象も同じです。公式ドキュメントで確認できる主な違いは、機能ごとの利用上限(ストレージの容量やAIデベロッパーツールのクレジットを含む)と、アシスタントの構成の2つです。
料金は、Google公式サイトでStandardとPlusをまとめて「1シートあたり月額30米ドルから」と案内しており、Plusだけの単価は公開されていません。エディションごとの料金は、Gemini Enterpriseの料金・プランを解説|エディション別の違いと選び方で比較しています。
Plusは利用上限とストレージの容量が大きい
Plusには、Standardより大きな利用上限とストレージの容量が設定されています。公式ドキュメントに掲載されている数値を、次の表にまとめました。
| 機能 | Standard | Plus |
|---|---|---|
| AIアシスタントの利用 | 1日160回 | 1日200回 |
| ノーコードでのエージェント作成 | 1日1件 | 1日10件 |
| 画像の生成 | 1日5枚 | 1日10枚 |
| 動画の生成 | 1日2件 | 1日3件 |
| Deep Research | 1日3回 | 1日10回 |
| ストレージとデータインデックス | 30GiB | 75GiB |
| AIデベロッパーツール | 月額10米ドル相当のクレジット | 月額15米ドル相当のクレジット |
※いずれも1シートあたりの数値です。2026年9月時点の公式ドキュメント「割り当てと超過料金」をもとに作成しています。
特に差が大きいのは、Deep Researchとノーコードでのエージェント作成です。調査レポートの作成やエージェントづくりを多くの社員が日常的に行う場合は、Plusのほうが余裕を持って使えるでしょう。
アシスタントの構成(チャット履歴の保持期間など)はPlusのみ
公式ドキュメント「アシスタントを構成する」には、「アシスタントの構成には、Gemini Enterprise Plus エディションが必要です」と注記されています。アシスタントの構成では、管理者がたとえば次のような設定を行えます。
- 追加の指示:回答の書式などについて、アシスタントに共通の指示を与える
- 禁止フレーズ:指定したフレーズを含む入力をブロックする
- チャット履歴の保持期間:1日・30日・60日・90日・120日・180日から選ぶ(初期設定は60日)
チャット履歴の保持期間は、チャットの作成日から数えます。保持期間より古いチャットは予告なく消えるため、設定する際は事前に利用者へ知らせておく必要があります。
Standardではこの設定を使えません。チャット履歴をどのくらいの期間残すかを社内の規程で管理したい場合は、Plusを検討するとよいでしょう。
Gemini Enterprise Standardの料金と申し込み方法
ここでは、Standardの料金の目安と、申し込みからユーザーが使い始めるまでの流れを見ていきましょう。
1シートあたり月額30米ドルから、30日間の無料トライアルあり
Google公式サイトでは、StandardとPlusを1つの枠にまとめ、1シートあたり月額30米ドルからと案内しています。Plus単体の単価は個別に公開されておらず、要問い合わせです。30米ドルが月単位と年間のどちらの契約の単価かは明記されていないため、正式な金額は購入画面や見積もりで確認しましょう。
契約期間は、月単位と年間の2種類から選べます。どちらの契約も、自動更新を設定できます。
Standard/Plusには、30日間の無料トライアルも用意されています。Google公式サイトのボタンから、Google Cloudコンソールのトライアル画面に進んで申し込めます。トライアルで使えるシート数などの条件は公式ドキュメントに明記されていないため、申し込む前に確認しておくと安心です。
※料金・トライアルの情報は2026年9月時点のものです。最新情報はGoogle公式サイトをご確認ください。
Google Cloudコンソールまたは営業経由で購入できる
Standardは、Google Cloudコンソールから購入できます。購入には、Google Cloudの請求先アカウントとプロジェクトが必要です。コンソールでは、エディションやライセンス数、契約期間、自動更新の有無、利用するプロジェクトとロケーションなどを指定して、サブスクリプションを作成します。
ロケーションはこの段階で選ぶため、前の章で紹介した統制機能の条件とあわせて決めておきましょう。
Google Cloudコンソールから購入できるシート数には、請求先アカウントの種類によって上限があります。
| 請求先アカウントの種類 | コンソールで購入できるシート数 |
|---|---|
| セルフサービス(オンライン)・販売代理店経由 | 最大25シート |
| 請求書発行(オフライン) | 最大1,000シート |
これを超えるシート数が必要な場合は、Google Cloudの営業担当やアカウントマネージャーに連絡し、オフラインの注文で追加のライセンスを購入するか、上限の例外を申請します。Google公式サイトでも、Standard/Plusの購入については営業担当への問い合わせを案内しています。
ライセンスはプロジェクトとロケーションごとに配布して割り当てる
購入してからユーザーが使い始めるまでには、次の3つの段階があります。
- 調達:請求先アカウントでサブスクリプションを購入する
- 配布:購入したライセンスを、利用するプロジェクトとロケーションに振り分ける
- 割り当て:振り分けたライセンスを、個々のユーザーに割り当てる
ライセンスは、プロジェクトとロケーションごとに分かれている点に注意しましょう。同じプロジェクトでglobalとusの両方を使う場合は、それぞれのロケーション用にライセンスが必要です。
Gemini Enterprise Standardが向いている組織
ここまでの内容をふまえて、Standardが向いている組織と、BusinessやPlusを検討したほうがよい組織を整理します。組織の規模よりも、必要な機能や管理の要件をもとに判断するのがおすすめです。
Standardが向いている組織
次のような要件がある場合は、Standardが有力な候補になります。
- 人数の上限を気にせず、複数の部署や全社で利用したい
- Businessで使える範囲を超えて、より幅広いコネクタで社内外のサービスとつなぎたい
- 社内の開発チームが作ったエージェントや、他社製のエージェントを従業員に公開したい
- 暗号鍵の自社管理やデータの保存場所の指定など、社内のセキュリティ規程で求められる統制機能が必要
- AIアシスタントやDeep Researchなどの上限を超えても、超過料金で業務を止めずに使い続けたい
金融や医療など、データの扱いに厳しい規程がある業種では、統制機能が選ぶ決め手になる場合もあるでしょう。ただし、統制機能にはロケーションの条件があります。必要な機能を自社が選ぶロケーションで使えるかを、先に確認しておきましょう。
Businessで十分な組織・Plusを検討したほうがよい組織
Businessで十分なのは、高度な統制機能や幅広いコネクタ、外部で開発したエージェントの持ち込みを必要とせず、基本の機能から使い始めたい組織です。Businessは1シートあたり月額21米ドルからと、Standardより低い価格から始められます。
まずはBusinessから始めたい場合は、ムームードメインの無料相談をご活用ください。ムームードメイン経由でGoogle Workspaceをご契約いただくと、Gemini Enterprise Businessを割引価格でご提供できます(割引の対象はBusinessエディションのみ)。日本円でのお見積もりにも対応していますので、こちらの無料相談窓口からお気軽にご相談ください。
一方、次のいずれかに当てはまる場合は、Plusを検討するとよいでしょう。
- Deep Researchやエージェント作成を日常的に多人数で使い、Standardの共有枠では足りなくなりそう
- 取り込むデータの量が多く、ストレージの超過が続きそう
- チャット履歴の保持期間など、アシスタントの構成をポリシーとして管理したい
どのエディションが合うか迷う場合は、30日間の無料トライアルで、自社のデータや使い方に合うかを試してみるのも1つの方法です。
Gemini Enterprise Standardに関するよくある質問
Standardを検討する際に出てきやすい疑問を、Q&A形式でまとめました。
BusinessからStandardへアップグレードできますか?
Businessヘルプには、Standardへのアップグレードについて、Google Cloudの営業担当に問い合わせるよう案内するページがあります。アップグレードを考えている場合は、まず営業担当に相談しましょう。
ただし、Businessで作成したチャットやノートブック、エージェントなどのデータを、Standardへ移った後に引き継げるかは公式に明記されていません。契約前に、データの扱いもあわせて営業担当へ確認しておくと安心です。
Standardでも日本国内にデータを保存できますか?
はい、国内リージョン「asia-northeast1(東京)」を選べば、検索やアシスタントなどの基本機能について、日本国内にデータを保存できます。ただし、国内リージョンは許可リスト付きの提供で、利用するにはGoogleのアカウントチームへの問い合わせが必要です。
基本機能は、データの保存に加えてAIの処理も国内で行えます。一方で、Google検索によるグラウンディングや動画の生成など、globalでしか使えない機能もあります。詳しくは、「日本リージョン(東京)はGoogleへの申請のうえで利用できる」で解説しています。
Frontlineエディションを追加するには何が必要ですか?
Frontlineは、倉庫や小売店などの現場で働くスタッフ向けのエディションです。利用するには、StandardまたはPlusのユーザーが150人以上いることが条件で、StandardやPlusの契約に追加する形で購入します。
Frontlineのユーザーは、Workflow Builderで自分でエージェントを作ることはできず、共有されたエージェントや、管理者が用意したエージェントを利用します。StarterとWorkerの2種類があり、1日あたりの利用上限などが異なります。購入を検討する場合は、Google Cloudの営業担当に問い合わせましょう。
まとめ
Gemini Enterprise Standardは、より厳格なセキュリティとコンプライアンス要件を持つ組織向けのエディションです。Businessの全機能に、幅広いコネクタや最新モデルへの優先アクセス、エージェントの持ち込みなどが加わり、1シートあたり月額30米ドルから利用できます。
人数の上限はありませんが、主な機能の利用上限は、同じプロジェクトとロケーションの中で、同じエディションのユーザー同士が共有します。暗号鍵の自社管理などの統制機能は、選ぶロケーションによって使えない場合があるため、購入前に決めておきましょう。Plusとの主な違いは、機能ごとの利用上限(ストレージやAIデベロッパーツールのクレジットを含む)と、アシスタントの構成です。30日間の無料トライアルも用意されているため、利用条件を確認したうえで、自社の業務に合うかを確かめてみましょう。
まずはBusinessから始めたい場合は、ムームードメインの無料相談をご活用ください。ムームードメイン経由でGoogle Workspaceをご契約いただくと、Gemini Enterprise Businessを割引価格でご提供できます(割引の対象はBusinessエディションのみ)。日本円でのお見積もりにも対応していますので、こちらの無料相談窓口からお気軽にご相談ください。



